第15話 武ちゃんのチャレンジ
ショボンとしている武ちゃん
素菓子
チリンチリンチリンチリン
「どうしたんじゃ元気がないの~」
武
「はい。
今日も動画を撮ったのですが、
動画をあげるOKがでなかったんです(涙)」
素菓子
「うまく出来なかったということじゃな?」
武
「はい。ここまでは何とか私なりに
やってきたのですが、ちょっと行き詰まっちゃって…」
素菓子
「本格的にやって1年じゃそうじゃの~
お主の可哀想なところはいきなり裏から入っとることじゃ。」
武
「裏?」
素菓子
「通常武術はまず、表から入る。
表とは見た目でわかる形のことじゃ。
手を払う、足を上げる、前に進む等
誰が見てもわかる動きそのものじゃ。
例えば、わかりやすい流派で言えば
武
「あまり詳しくはないですが…
太極拳が健康体操でやってるのはわかります。
琉球空手はピンとこないです…」
素菓子
「では、太極拳で例えようかのう。
あれが健康になるのかどうかは、ワシにはわからん。
ラジオ体操をやっても健康になるのじゃったら
体を動かすという意味で太極拳も健康になるんじゃろう。
一般の認識とはそんなもんじゃろう。
それは見たまんまの動きの感想なんじゃ。
正式弟子になるとその動きの裏の意味を教えて
もらえるようになる。ただし、全員に教えるのではなく
こいつなら大丈夫と見極められた者だけじゃ。」
武
「裏の意味?
それが、私の教えてもらってる裏と
言う事なんですか?」
素菓子
「そうじゃ。健康体操と思われとる太極拳も
元々は殺人の為に創始されとるのはわかっとるかの?
武
「そうなんですか!?
あんなんで人を殺せるんですか?」
素菓子
「殺せるんじゃ。それのみを目的に創られてる
からの。ゆっくりとした動きにも意味がある。
激しい動きができない老人の為ではなく、
自分の重心の位置や全身の繋がりや呼吸との
同調をゆっくり確認しながらするから意図的に
ゆっくりしとるんじゃ。もちろん実際は
動きを極力小さくして人の目には見えないように
隠して出すんじゃ。達人ほど動きは小さい。
じゃが、体の中ではものすごい嵐の如き
力が渦巻いておるのじゃ。
ただ、表に出さんだけなんじゃ。
見た目は軽くやってるのに。ってやつじゃ。」
武
「それはゆっくりしないと確認ができない
という言い方もできますか?」
素菓子
「いい質問じゃ!
本質的な意味を知った初期の段階は
ゆっくり動かんと動けんのじゃ。
早い動きでは手足がバラバラに動いてしまい
繋がりや同調しないので体も浮くしの。
攻撃しても力や気が伝わらん。
もちろん一般人は見てもわからんぞ。
わかる者は一目でわかるがの。」
武
「たしかに練習中、切れてる切れてる
と移動する際や、動きの節目節目に
常に言われてました。今日も手と足が
バラバラに動いていると何度も言われました。」
素菓子
「そこがお主の不幸なところじゃ。
表の動きではそれでいいんじゃ。
そこだけを見れば正直良く出来てる部類に
入るじゃろう。じゃが、
奴はそれを良しとしない…。
嘘が嫌いなんじゃ。形だけが出来ても
意味がないと思っておるんじゃ。
ただし、それを1年しかしてないお主に
求めるは奴の未熟よ!」
武
「でも、何回も丁寧に教えてもらいました。
それでもできなくて…それが申し訳なくって…」
素菓子
「なめるな!!!!
そんな簡単にできたらみんな苦労せんわい。
この動きを身につけるためにみんな何年何十年と
修行しとるんじゃ。それを1年経つか経たんかの
者が簡単にできると思うな!できるのは1部の
天才だけじゃ。残念じゃがお主にそこまでの才は
ない。じゃから焦らず、もっと己の技術を熟成
させてやればよい。武術武道をやっている者は
ただ強くなりたいという者もおるが、その動きを
日常や仕事に活かして快適な生活を送りたいと
思っているものもまた多いんじゃ。最近では介護の
仕事に古武道の動きが活かされたりしとる。」
武
「すいません。ついつい焦っちゃって。」
素菓子
「無理もないて。じゃが、それも奴の責任じゃ。
気にすることはない。
ただ、お主に本質的な動きを理解実戦出来るように
なってもらい。あらゆることに応用が可能ですよ。
と、知ってもらいたかったという気持ちがあったのを
わかってやってくれ。
武
「はい、わかってます。」
素菓子
「そして、世界中の女性に。『誰にでもできますよ』
と言うことをお主と護身術を通じて伝えたかったのじゃ。
ただ、お主を傷つけたのは事実。
全てはワシの責任じゃ。
すまん悪いことをした。許してくれ。」
武
「いいんですよ。ちょっと今日はこたえたけど…」
素菓子
「よう我慢してくれた。ありがとうのぉ。
お主には感謝しておる。
弟子にはワシから言うておく。
しばらく、動画の新たな配信はせんようにと」
武
「えっ!そんなことしたら…」
素菓子
「かまわん。しばらく、ゆっくりと修行せい。
ワシも手伝わせてもらう。地盤硬めじゃ!
それでよいかの?」
武
「もちろん!
私も極めると決めましたから(笑)!!」
ということで、武ちゃんの技術的な土台を
固める為、少なくとも年内の動画の新しい配信は
ないと思います。ひょっとしたら、チラチラ
あげるかもしれませんが…
武ちゃんの今後の成長をお楽しみに!
つづく